4歳で渡米~初めて買って貰った車のオモチャ。

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4歳で渡米~初めて買って貰った車のオモチャ。

今思えば僕は大変なマセガキだったのかもしれない。

5歳になる1ヶ月前、僕はいきなり母にアメリカに連れて来られた(笑
全く予期せぬ出来事だった。
アメリカと日本の航空券が50万もするような時代だった。
1982年のことだった。

当日の朝、突然の報告を受けた僕は、
いとも簡単に、あっさりと
当時通っていた、東京都東久留米の上の原保育園や
近所の友達とのお別れする時間も与えられぬまま、
成田発 LOS ANGELES行きの Pan Am(今はなきパンナムという大手飛行機会社)
の飛行機に乗せられたのだった。

はじめは抵抗していた僕も、
一週間だけだからという母の言葉と、
できたばっかりのロサンゼルスのディズニーランドの写真に誘惑され、
素直に母にくっついて行ったのだった。

このとき父親は一緒ではない。
まさかこの旅が1週間どころか、
3年も続くなんて僕は全く予想もしていなかった。

冷蔵庫もない、家には保存のきくバナナしかない。。。
100円のドーナツが高くて買えなかった、
そんな長く辛い貧しいアメリカでの生活の中で、
僕が滞在3年目に、はじめて買ってもらったのが、
車のオモチャである。

だけど、当時の僕達は貧しくて、
そんなものをおねだりできるような状態ではなかった。

小さい頃からお絵かきがすきだった僕だったが、
アメリカに来た頃は、紙も鉛筆も満足には与えてもらえなかった。

今の時代からすれば考えられないかもしれないが、
体一つで、外国に移り住んだ僕等のような不法移民の間では
このような生活は決して珍しいものではなかったと思う。

貧乏話はこのくらいにしておき(笑

マセガキだった僕は、
幼い頃から常に大人の観察をしていた。
そして、あえて相手を怒らすようなこと、
つまりその人が一番言って欲しくないこと、
言ったら怒ってしまうような事を察することができる子だった。

だから、時に本当に大人たちにとっては
いやなガキだったに違いない。

それと同時に、大人が、社会が、母が、僕に
何を求めているかということも敏感に察知していた。

つまり、

僕は女だから、女の子のおもちゃを欲しがり、
女の子の洋服を欲しがり、女の子と遊び、
女の子がするべきと社会が信じていることを
疑いもせずに遂行することを望んでいるだろうし、
また、それが自然なこと、普通なことだと信じて疑っていないだろうと。。

5歳か6歳の僕は バカみたいではあるが、
そんなことを毎日考えていた。

だから、口がさけても
“車のおもちゃが欲しい”
“ラジコンが欲しい”

などとは口がさけても言えなかったのだ。

何も考えないで言えば良かったのだが、

一人っ子だった僕は

それが母親を心配させる、
裏切ることだ。。などと
バカみたいに真剣に悩んでしまい、
欲しくもない女の子のおもちゃを
ねだったりもしてみた。

全部とは言わないが

かなり演技も入っていた。

だから、2年は我慢した。

アメリカのスーパーはオモチャを良く売っている。
車やロボットがいっぱい並ぶコーナーは僕にとって
夢のような世界だった。

だけど、あまりそこに長い間いると
疑われてしまいそうだから、
男だってばれてしまいそうだから、

母の目を盗んで、男の子のコーナーをこっそり見ては
女の子のオモチャを見ている振りをしていた。

欲しがっている姿さえも
見せてはいけないと思っていたのだ。

だから、最初の2年は
本当に我慢した。
お金の問題もあるが、
車のおもちゃを買ってとは
口がさけても言えなかった。

だけど、その我慢も限界が来た。
もういてもたってもいられなくなった。
変な目で見られても、
母親に嫌われてもいいと思った。
すごい小さいことだが、
6歳の僕にとっては、
すごーく大きなことだった。

今で言う
カミングアウト
と同じような感覚だったと思う。


“この車のおもちゃが欲しい”

この一言を言うまでに
2年以上の年月がかかった。

そして、買ってほしいと言ったあとも、
怪しい位に言い訳をしたのだ。

“この車、ロボットに変身するんだ!変身するから欲しいんだ”

苦しい言い訳だが、自分が自分の体の性と
違う性が欲するべきとされている
おもちゃを欲しいと思っていることを
悟られまいと、必至で言い訳した。

車が欲しいんでも、ロボットがほしいんでもなくて

変身するから欲しいんだと。。。

母親は、少し不思議そうな顔をしたが、
けっこうすんなり買ってくれた。
それも2つも。。。。

僕は涙が出そうなくらい嬉しかった。
その後言った、ピザのチェーン店のテーブルに
その車を二つ並べて、
嬉しそうに僕はいつまでも眺めていた。

そして時折、
車からロボットに変身させては
母に一生懸命説明していた。

photos by keijiro

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